言葉の使い方一つで印象は変わります。
語彙力を培い、ちょっと気の利いた言葉を文章に織り交ぜることで、相手が抱く印象がポジティブになったりします。
その一方で、間違えた敬語をそのまま使い続けていると、悪印象を与えてしまうこともありますよね。
本記事ではビジネスの場面でよく使われる「御社」と「貴社」、「当社」と「弊社」の使い分けをご説明します。
「御社」と「貴社」はどう使い分ける?
どちらの言葉も相手の会社を指し、敬って呼ぶ時の言葉です。
違いについて簡単に言うと
御社(おんしゃ)・・・話し言葉で使う
貴社(きしゃ)・・・書き言葉で使う
どちらの相手の会社のことを敬う表現ですが、一般的には書類では「貴社」、口頭では「御社」を使います。
「貴社」(キシャ)という読み方は、帰社、記者、喜捨など同音異義語が多いため、紛らわしくなってしまうのです。
また「御社」「貴社」は敬語なので、「御社様」「貴社様」という言い方は二重敬語にあたり、間違った日本語です。
敬語表現を重ねすぎるとかえって「失礼だ」と思われることも少なくないので、使わないようにしてください。
一般企業でない場合は別の言い方があります。
銀行=「御行」「貴行」
信用金庫=「御庫(御金庫)」「貴庫(貴金庫)」
学校・学校法人=「御校」「貴校」
※学校名が●●学園の場合は「御学園」「貴学園」、●●学院の場合は「御学院」「貴学院」もOK
市役所、区役所=「御庁」「貴庁」
病院=「御院」「貴院」
機構=「御機構」「貴機構」
組合=「御組合」「貴組合」
協会=「御会(御協会)」「貴会(貴協会)」
など
いずれにしろ、話し言葉の時は「御」を付け、書き言葉の時は「貴」を付けると覚えておくと良いでしょう。
「御社」と「貴社」を使った例文
【履歴書など応募書類では……】
貴社が、他社と比較してお客さまに合わせたきめ細かいサービスを提供している点に共感しました。
現職で培った店舗運営の経験を生かし、即戦力として貴社に貢献したいと考えております。
【面接では……】
御社は業界のパイオニアであり、海外拠点の展開も視野に入れているからこそ経験できる業務に携わりたく志望しました。
前職の事務経験を生かしながら、新しい知識も吸収し、早く御社に貢献できるように努めます。
「御社」「貴社」の使い分けは転職活動だけでなく、あらゆるビジネスシーンで使える基本マナーなので、しっかりマスターしましょう。
「当社」と「弊社」の違いは?
自分の会社を指す言葉に「弊社」「当社」という言葉もあります。
どちらも意味は同じですが、「弊社」のほうがへりくだった印象を与える言い方です。
一般的なビジネスシーンにおいて、よくある使い分け方としては
弊社(へいしゃ)・・・社外の人に話す時に使う
当社(とうしゃ)・・・自社の人に話す時に使う
実際、取引先との会話や、商談などでは「弊社」を使っている方も多いのではないでしょうか。
ただし、厳密な使い分けのルールはないようで、取引先に対しても「当社」と言う場合もあるようです。
「御中」と「様」の書き分け
履歴書や職務経歴書を郵送する、あるいはメールでコンタクトを取る際など、あて名書きで「御中」や「様」といった敬称を使うことがあります。
この使い分けは
御中(おんちゅう)・・・組織の中の誰かに対して使う敬称
様(さま)・・・特定の個人に対して使う敬称
「御中」は、企業名・団体名・部署名などの後に付ける敬称のため、“組織に対して使うもの”と思われがちですが、実は違います。
「御中」は、「名前は分からないが、組織の中のどなたかへ」という意味があります。
反対に、名前が明らかな場合は「様」を使います。そのため「御中」と「様」の併用はNGです。
○ 株式会社●● 人事部御中
○ 株式会社●● 人事部 舞名比 太郎様
× 株式会社●●御中 舞名比 太郎様
「様」を使う場合、「御中」は不要です。
では、あて名となる部分が名前や部署名ではなく、「採用担当」などの場合はどうすれば良いでしょうか?
「採用担当」の後に「者」を付け、「採用ご担当者」とする場合は、相手が人であることが明確になっているため「様」を付けましょう。
しかし「採用担当」を「組織」としてとらえると「採用担当御中」のほうが適切です。
○ 株式会社●● 採用ご担当者様
○ 株式会社●● 採用担当御中